宋磁 ―神秘のやきもの
2018/04/24


開催期間 2018年4月21日(土)~6月10日(日)
月曜休館(ただし、4月30日は開館)


展示概要


悠久の歴史を有する中国陶磁の中で、宋時代(960 - 1279)にはその美しさが頂点に達したとも評されます。
宋時代の陶磁器である「宋磁」は、官窯(かんよう)、景徳鎮窯(けいとくちんよう)、定窯(ていよう)などに見られるように青磁・白磁・黒釉磁(こくゆうじ)などの単色の釉薬(ゆうやく)をまとい、非常にシンプルかつ研ぎ澄まされた造形性が美しく、格調高き陶磁器です。北宋時代末期から南宋時代にかけては絵画の世界で文芸復興運動がおこりました。この頃宋磁においても、中国古代の王朝が祭祀で用いた青銅器に倣った陶磁器がつくられており、古典へのまなざしを「やきもの」という立体造形で象っています。そこには皇帝や士大夫といった文人達の高貴かつ清逸な美意識が表わされているのです。その一方で磁州窯(じしゅうよう)、吉州窯(きっしゅうよう)などの搔き落としや鉄絵、さらには五彩(宋赤絵)などの色彩に変化を凝らした絵付陶磁も生み出され、それらには一般庶民の生活に根ざした活気に溢れる、ユーモラスなデザインも展開されています。
明時代の『格古要論』や清時代の『年窯墨注歌』などの文献にも宋磁の素晴らしさは語りつがれています。宋時代から長い年月を経た後世の人々もまた、宋磁に畏敬の念を抱き続けていたのです。さらに日本でも古くから唐物として知られる作品があり、近代以降には「鑑賞陶器」としても宋磁が愛でられてきました。
このように宋磁は同時代の人々にとっても、後世の人々にとっても魅力的で、神秘的なものであったといえます。本展覧会では、優雅な美、また親しみ溢れる多様な「宋磁」の世界を、宋時代前後のやきものの様相とあわせてご紹介いたします。


本展のみどころ

01  約40年ぶりの開催!

当館では約40年ぶりの「宋磁」展! 借用作品をあわせて重要文化財6件、重要美術品2件を含む約110件を通して、神秘のやきもの─宋磁の世界へ誘います。

02  代表的な窯(系)ごとの様式美を見る!

官窯を頂点に、定窯、磁州窯、耀州窯など各地の窯(系)で独特の様式美が確立している宋磁。本展ではそれぞれの窯(系)の様式美を比較しながらお楽しみいただけます。

03  絵画に描かれた宋磁

宋磁は実物だけでなく、絵画の中にも描かれました。そこにはどのような宋磁が描かれ、なぜ描かれたのか? 思いを馳せてご覧いただければと思います。

04茶の湯と宋磁

本展では宋磁の《茶碗》に注目。新収蔵品であり、類例が少なく珍しい釉調が魅力の龍泉窯の砧青磁で天目形の茶碗や吉州窯の玳玻天目など、厳選して紹介します。


展覧会の構成

第1章 

宋磁の世界 ―神秘のやきもの

第2章 

多様なる宋磁 ―窯系・様式美の展開

第3章 

宋磁から元磁へ ─継承と革新

各章の解説

第1章 宋磁の世界 ―神秘のやきもの
宋磁は凜とした形と艶やかな質感を生みだす単色の釉薬(青・白・黒)が基本です。無文のうつわは静かで清らか、また青銅器の祭器に倣った力強さをそなえるうつわも作られます。さらにその形を生かすようにシャープな彫り文様や貼付け文様がうつわに力を与えています。それらは宋磁を代表する官窯あるいは官窯とも関係の深い耀州窯、鈞窯、定窯、龍泉窯などによく見られます。一方で、筆描きや粗放な彫り文様でデザインされ、ゆったりとした雰囲気を放つ磁州窯。ここでは神秘的な雰囲気をそなえるやきもの、さらには大らかな雰囲気で日常的に人々に愛用されていた宋磁の世界を紹介します。


第2章 多様なる宋磁 ―窯系・様式美の展開

唐時代の陶磁生産は「南青北白」と称され、南方地域で青磁、北方地域で白磁が主に焼造されていたと言われます。宋時代になると、中国全域で様々な陶磁器が盛んに作られ、皇帝・宮廷用のうつわを焼造する官窯を頂点に、北方地域では定窯、磁州窯、耀州窯、鈞窯、南方地域では景徳鎮窯、越州窯、龍泉窯などに代表されるような、青磁、白磁、黒釉のうつわなど、それぞれの窯(系)で影響関係はありながらも独特の様式美が展開されます。また中国の中原の宋王朝と対峙した北方の遼王朝は、中原の陶磁器文化の影響を受けながらも、独自の陶磁器文化(遼磁)を生み出しています。本章では、窯(系)ごとの代表的な作例を中心にその特徴と造形美を辿っていきます。


第3章 宋磁から元磁へ ─継承と革新
中国陶磁史の中でも最高峰の段階に達したとも称される宋磁。漢民族による宋王朝が滅び、モンゴル民族による元王朝が成立したのちも、宋王朝の官窯で作られてきた青磁の系譜は、龍泉窯において継承されます。技術は継承されながら、さらに大ぶりな作品が多く作られるようになります。一方で、宋磁とまったく異なる世界観が出現します。白い磁胎のうえに鮮やかな青色で、しかも筆描きにより文様が表される青花(染付)が出現します。そしてその青花はその後、元・明・清時代の中国陶磁史の中心的存在として新たなる時代を築いていくのです。





出光美術館〒100-0005
東京都千代田区丸の内3-1-1
帝劇ビル9階
(出光専用エレベーター9階)
ハローダイヤル(展覧会案内)
03-5777-8600

開館時間
午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
毎週金曜日は午前10時~午後7時(入館は午後6時30分まで)

休館日
毎週月曜日(ただし月曜日が祝日および振替休日の場合は開館)
年末年始および展示替期間

入館料
一般1,000円/高・大生700円
中学生以下無料(ただし保護者の同伴が必要です)