【2020.3.19 三年坂美術館・村田理如氏の美学に触れて…-第三部-】
2020/03/25
wakisyoukai


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春の麗かな午後、私どもは『和器競売オークション2020 春(※3/29(日)-30(月)開催)』の作品の中から選りすぐりの優品を手に村田理如氏を訪ねた。

村田氏は清水三年坂美術館の館長や並河靖之有線七宝記念財団理事を勤めており、幕末・明治期を中心とする細密工芸に関して非常に造詣が深い。
訪問先は村田氏が館長を勤める三年坂美術館。
三年坂美術館は京都・清水寺にほど近い風光明媚な場所に軒を構える。

美術館の作品整理中(次回展覧会は4/4-との事)にかかわらず、村田氏には快く対応頂いた。

今回はインタビュー最終回である。

Products

●L407『勝珉·一也·勝見等五大名家作 純銀花鳥集彫刻茶托5客(共箱)』各 D:12.3cm/G:148g

・村田氏
勝珉、美盛、清、一也、そして正阿弥正義の五人衆の作品。
使うのが勿体ない名工尽くしの非常に良いものだ。
●L415『芝山蒔繪象嵌花瓶一對(木箱)』H:22.0cm
・本作は芝山漆器の真骨頂とも呼べる素晴らしい出来である
白蝶貝、夜光貝などの貝類や象嵌したものをはめ込むことにより、細工が立体的に浮かび上がることが特徴であり、蒔絵もふんだんに用いた絢爛な仕上がりだ。
足の部分が象鼻になっていたり、首下部分の独特の造形と言い、魅力に溢れている。
美術館級の目を見張る力作。

・村田氏
芝山の中では上位に位置する作品。
丁寧な仕事で好感が持てる。
芝山細工専門で分業制である。
クオリティの高い職人の作品である事は間違いない。
●L438『加納夏雄作 梅彫銅包銀急須』H:5.7cm

・村田氏
銅を使った夏生らしい作品だ。
本物の銘に違いない。
蓋裏にある『長友斎』の在銘は銀・鍛造をしたものの刻。
強く主張し過ぎない温かみのある琳派風の表現が魅力的だ。
空間を残す余白の美しさがある。
金の平象嵌で銘を彫るのは珍しい。
銅と銀の被せが難しく、巴紋がユニークである。

※加納夏雄
旧姓は伏見氏。
文政十一 年(一八二八)四月十四日に山城国愛宕郡柳馬場御池通りで米商伏見屋治助(天保九=一八三八年没)の子として生まれる。
天保四年(一八 三三)に六歳で刀剣商加納治助の養子となり治三郎と改める。
奥村庄八に彫金を習い、天保十一年 (一八四〇)に十三歳で池田孝寿に入門し弘化二年(一八四五)に十八歳で師家を辞し、翌三年(一八四六)に京都で開業し寿朗と名乗る。
この間に谷森種松に漢字を中島来章に絵画を学ぶ。
嘉永年間(一八四八ー一八五四)に夏雄と改銘した。
安政元年(一八五四)十月に二十七歳で江戸に出て神田お玉ケ池と永富町に住み、安政大地震のため翌年に佐久間町のあたらし橋側に転宅、文久年間に下谷長者町を経て和泉橋通り徒士町へ引越した。
明治二年(一八六九)に四十二歳で大阪造幣局へ出仕し新貨幣の原型製作を行い、同四年(一八七一)東京に戻り宮内省雇員となり、下谷青石横町に住む。
翌五年(一 八七二)に再び大阪に行き造幣寮に出仕し明治十年(一八七七)四月に東京に帰る。
明治十四年(一八八一)に五十四歳で内国勧業博覧会審査員となり、同二十三年(一 八九〇)に東京美術学校教授、帝室技芸員になり、六十八歳で従六位に翌年には高等官五等に叙される。
弘化三暦大簇初九蹄下寿朗、 安政三年仲冬左京人夏雄作、甲子春日夏雄於東武浩之、辛卯春日青石老人夏雄刻、行年七十一歳夏雄刻と銘する。
高彫色絵工法で鐔や小柄を造る。
後年は片切彫の作品 が多い。
明治三十一年(一八九八) 二月三日に七十一歳で没。
谷中霊園甲種第一号六側に埋葬し戒名は芳猷院励夏雄居士という。
名工。
家庭は三男二女で三男の秋雄が父の業務を継ぐ。
門人に海野勝珉、 香川勝広、塚田秀鏡、友雄、覚弥、勝守、文雄、隆雄を出し明治金工界に君臨した。
京都、東京市住。→寿朗 

●L440『肥熊 壺川作 純銀象嵌湯沸(箱付)』H:15.0cm/G:503g
・京風の上品な作画に関して特徴がある銀瓶。
天皇家を意味する16カ弁の菊紋が入っている現来のしっかりとした品物であり、『肥熊』と刻銘有。
柄の部分は肥後象嵌。
肥後象嵌とは京都駒井象嵌・駒井音次郎(1842 - 1917)の源流。
蓋部分の鳳凰など京都駒井製の象嵌と図案に共通項がある事から、音次郎と関係の近い作品である。
まさに超絶技巧。

・村田氏
16カ弁の菊紋が天皇家の証であり、緻密な象嵌技法にルーペで目を見張る。
鉄を彫り下げた技法が珍しい。
柄は鉄に布目象嵌をして鶴などを金刻して配されている。
銀のつまみの上に鳳凰は高肉象嵌されており、高度な仕事である。
此処まで作りこむ仕事は中々ない。
 

3回に渡ってお送りした村田氏へのインタビューはいかがだったろうか?

インタビュー頂いた作品らは全て【KEIBAY】より予約入札が可能である。
ぜひ皆様、見落としのないようにご覧くださいませ。

最後となりましたが、閲覧頂きありがとうございます。
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